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<介護保険制度>
1996年末現在、政府が2000年度スタートを目指している介護保険制度は、寝たきりや痴呆になった高齢者へのホームヘルパー派遣や特別養護老人ホーム入所などのサービスを40歳以上の国民が提供する保険料によって賄おうという方式で、この制度の運用にかかる費用は2000年時点では4兆2,000億円、一人当たり月2,500円程度の保険料負担が見込まれている。但し、2010年では、高齢人口が約600万人さらに増加するため、運用費は6兆9,000億円、保険料負担は一人当たり月3,500円と約1,000円アップする。

 

(2)新しい社会セクターの形成
人々が生活にゆとりを持ち、元気な高齢者が増加することで、今後急速に社会活動は活発化することが予測される。
既に、全国各地でその地域社会に根ざした様々な社会活動が展開されつつあるが、その多くは未だ趣味、余暇の節中であり、自治体の支援も少なくない。
また、欧米では社会セクターとして不可欠なボランタリー・セクターが、わが国では未成熟である。阪神・淡路大震災時に集合して来たボランティアのほとんどが何の活動もさせてもらえなかったことは、「欧米のボランタリー団体等が保有しているようなボランタリー・リーダー(ほとんどが有給スタッフ)が不在だった」(イギリス、ボランタリー・センター調査研究部長評)ことによる。
これからの社会においては、情報化、地方分権化、規制緩和等が進む一方で、人々の自己実現の追求も盛んになるため、人々はいわゆるヨコの繋がりが容易になり、様々な趣旨、目的の組織が生まれ易くなる。そして、その組織の目的が「他人の役に立つこと」であれば、ボランタリー組織(非営利団体)として活動し発展してゆくこととなる。わが国においても、ようやくNPO法が誕生するが、これも社会発展の証であろう。これまで、わが国の非営利団体は主として行政の側面支援者として公益法人認可を受け、政府や自治体の外郭団体と称され活動しているのが定型であり、欧米社会からは理解しがたい特異な状況であった。
しかし、今後においては、福祉財政とくに人口構造による次世代負担の限度、あるいは地域社会の持つ人的社会的資源によって制約される条件等を考慮に入れれば、行政が用意できる財源や資源のみでは、高齢者介護サービス等の維持向上が難しい状況になる場合もありうる。欧米ではこうした場合に対応できるのはボランタリー・セクターでしかないと考えられている。1980年代以降のイギリスはこうした状況に対応して、行政の限られた予算で、行政に替って(行政からの委託で)ボランタリー団体がナーシングホームの運営など多方面で

 

 

 

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